いきなりですが、歩き方の話をします。僕たちは歩くとき、右手を出すと左足が前に出る。これが僕らにとって「普通」の歩き方・走り方ですよね。でも実は、右手と右足、左手と左足が同時に前に出る歩き方があるのをご存知でしょうか。「なんば走法」と呼ばれるこの動き、僕は高校生の頃に陸上競技をやっていた時に出会いました。
それから10年以上、日常生活でなんば走法を意識することなんて一度もなく、記憶の奥底にしまい込んでいたのですが、最近始めたヒップホップダンスの練習中に、ふとこの動きが蘇ってきたんです。「あれ、これってなんば走法じゃないか?」と。今日はその気づきを記事にしてみようと思います。
「なんば走法」とは何か

改めて説明すると、「なんば走法」とは右手と右足、左手と左足がそれぞれ同じタイミングで前に出るような歩き方・走り方のことです。(ちなみに、なぜ「なんば」なのかという語源については、諸説ありますので説明は割愛いたします)普段とは逆の動きなので、実際にやってみると強い違和感を覚えるはずです。
ところが、この不思議な走法には「疲れにくい」という特徴があるといわれています。日本では古来、飛脚たちが長距離を走り抜くためにこのなんば走法を取り入れていた、という説もあるほどです。江戸時代、車も自転車もない時代に何十キロもの道のりを走り続けた飛脚たちが、身体への負担が少ない動き方として自然にたどり着いていたのだとしたら、それはとても興味深い話だと思います。
ダンスと「なんば走法」の共通点
僕は高校を卒業して陸上競技をやめてからというもの、なんば走法のことなんてすっかり忘れていました。ところが30代真ん中になった最近、ヒップホップダンスをするようになって、あるステップの練習中にこの感覚がよみがえってきたんです。
きっかけは「ブルックリン」と呼ばれる、ダイナミックな体重移動を伴うステップでした。ブルックリンをカッコよく踊るコツは、出した足にしっかりと体重を乗せ、さらにその出した足側の肩や腕といった上半身も同じ方向に乗せていくイメージを持つこと。つまり、右足を出すなら右肩・右腕も一緒に前へ出していくような感覚です。
この動きを繰り返し練習しているうちに、「あれ、これって右手と右足が同時に出る動きだ。なんば走法そのものじゃないか」とピンときました。まさか陸上競技で身につけた身体の使い方が、15年以上の時を超えてダンスの中で再びつながってくるとは思ってもみませんでした。忘れていたはずの感覚が、まったく違うフィールドで蘇ってきたことに、ちょっとした感動すら覚えました。
ダンス全般に「なんば走法」が有効だという気付き

ブルックリンを通してなんば走法との共通点に気づいてから、意識してほかのステップも見直してみると、実はほとんどのダンスステップになんば走法的な体重移動が有効だと感じるようになりました。
出した足側の上半身も一緒に出していき、身体全体の重さをその足に預けにいく。この体重移動がもたらす恩恵は、思っていた以上に大きいものでした。
まず単純に、身体全体が出した足の方向へ向かうため、動き自体がダイナミックに見えます。上半身と下半身がバラバラに動くのではなく、一つの塊としてグッと移動していくので、見た目のインパクトが変わってきます。
そしてもう一つ、僕にとってはこちらのほうが予想外の発見だったのですが、体重の切り返し(つまりステップの切り返し)が驚くほどスムーズになるんです。出した足にしっかりと体重が乗っていると、その足が次の一歩を踏み出すための軸足として安定します。
軸がぶれないからこそ、素早い切り返しが必要なステップもやりやすくなりますし、逆にあえてどっしりと体重を乗せきって、重たいグルーヴ感を演出することもできるようになります。
体重移動がスムーズになるということは、それだけ身体全体のコントロールが利きやすくなるということでもあります。ダンスのキレや説得力は、こうした細かな体重移動の質によって大きく左右されるのだと、あらためて実感しました。
まとめ
身体の切り返しがラクになるというのは、言い換えれば動きに無駄がなくなるということなのだと思います。無駄がなければ疲れにくくもなるはずで、江戸時代の飛脚たちがなんば走法を取り入れていたのだとしたら、それも納得できる話です。
そして、アメリカ発祥のヒップホップダンスの中に、日本が古くから伝統的に用いてきたなんば走法の動きと通じるものがあったというのは、なんとも興味深い発見でした。ジャンルも時代も国も違うのに、人間の身体が効率よく力を使おうとすると、たどり着く動きは似てくるのかもしれません。
こうして自分の身体の動かし方について改めて考え、洞察を深めていくことも、ダンスを続ける楽しさの一つだなと感じています。また新しい気づきがあれば、こうして記事にしてご紹介していきたいと思います。



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