『ヒップホップ・アメリカ』書籍レビュー|ヒップホップの見え方が変わった話

活動記録

正直に言うと、最初のページをめくったときの印象は「堅苦しいし、読みにくいな」でした。

本格的なガチ書籍で、人名や用語もバンバン出てくる。前提知識がないと、ページをめくる手が何度も止まる。そんな一冊です。

でも読み終えたいま、この本のおかげでヒップホップに対する自分の見方がガラッと変わりました。今日はその話を書いていきます。

『ヒップホップ・アメリカ』はどんな本?

『ヒップホップ・アメリカ』は、ジャーナリスト・作家のネルソン・ジョージが、アメリカのヒップホップがどのように生まれ、広がり、ひとつの大きな文化になっていったのかを描いた一冊です。

この本がすごいのは、ヒップホップの「音楽」だけを解説する本ではないところ。DJ、ラップ、サンプリング、ギャングスタ・ラップといった音楽の話はもちろん、ファッション、スポーツ、テレビ、音楽産業、マーケティング、そしてアメリカ社会との関係まで、かなり幅広い視点でヒップホップが語られています。

読み進めるうちに、「ヒップホップ=ラップの音楽」という自分の中にあったイメージが、少しずつ崩れていく感覚がありました。ヒップホップは単なる音楽ジャンルではなく、音楽、ダンス、ファッション、ビジネス、社会、そしてそこに生きる人たちの価値観まで含んだ、ひとつの「カルチャー」なんだと思い知らされる一冊です。

僕のように「ヒップホップは好きだけど、歴史や文化についてはまだまだ知らない」という人にとっては、知らなかった背景を知る良いきっかけになるはずです。

僕自身がヒップホップに本格的にハマったのは、30代半ばになってから。

ダンスは18歳からずっと続けてきましたが(といっても、まったく踊っていない時期も半分以上ありますがw)、メインはハウス。それでも大きな括りで言えば、ダンスというヒップホップ文化にはずっと触れてきたことになります。

ただ、いざ改めて音楽を聴き込んだり、DJを始めたりするようになると、

「そもそもヒップホップって、どうやって生まれたんだ?」 「なぜラップやDJ、ダンス、ファッションまで含めて、こんなに大きなカルチャーになったんだ?」

と、その背景がどんどん気になるようになっていったんです。

そんなタイミングで手に取ったのが、この『ヒップホップ・アメリカ』でした(他の方のブログでちらっと紹介されていたのがきっかけです)。

実際に読んで印象に残った3つのこと

① 東海岸・西海岸の関わりと確執がすっきり理解できた

2PACとノトーリアスB.I.G.の抗争など、断片的にしか知らなかった対立の背景が、ちゃんと文脈として繋がって理解できるようになりました。ニュースやドキュメンタリーで見聞きしていた「点」の情報が、この本を読むことで「線」になった感覚です。

② 知らなかったアーティストにたくさん出会えた

自分がまったく知らなかったアーティストの存在を数多く知れたのも大きな収穫でした。しかも名前を知るだけでなく、その人が何を背負って活動していたのかという背景まで分かった上で音楽を聴けるので、これまでとは違う深い楽しみ方ができるようになりました。

③ 「レペゼン自分」というヒップホップのマインドがよく分かった

個人的に一番刺さったのがこの視点です。ファッションにおいて、ブランドロゴやメッセージがプリントされたアイテムは、実は「自分をレペゼンする」うえでは逆に邪魔になる、という考え方が紹介されていて、これが面白かった。

考えてみれば、自分がレペゼンしたいのはブランドではなく、自分自身のはず。もともと僕は無地のファッションを好む傾向があったのですが、もしかしたらそれは無意識のうちに「レペゼン自分」をするための本能だったのかもしれない、なんてことを思わされました。

読んで感じたメリット

表紙カバーを外した写真

著者自身がヒップホップの歴史を、まさに当事者として肌で経験してきた人であり、知り合いにも歴史に名を残す人物が多い。そんなヒップホップ界の伝説的なポジションにいる人だからこそ書ける、リアルなエピソードの数々が、この本の一番の価値だと思います。

しかも話題は音楽だけにとどまりません。人種差別やドラッグといった社会問題、政治、ビジネスの話にまで多岐にわたり、「よくこれだけ各分野を深く書けるな」と、読みながら何度も感心させられました。

読んで感じたデメリット

予想以上にページ数がある

一方で、正直に言うと読みやすい本ではありません。

思っていたよりも小さめの文字で、思っていたよりもページ数が多く、ネット通販で注文して手元に届いたら「え、これ読破できるかな?」と面食らいましたw

ヒップホップの各要素についてかなり深く掘り下げられているぶん、「ヒップホップ文化全体をざっくり知りたい」というニーズにはあまり応えてくれない構成になっています。

ヒップホップの前提知識がない人が読むと、率直に言って難しいです。人名や地名など、知らない固有名詞が次々と登場するので、「あれ、いま何の話をしてるんだっけ?」と迷子になることもしばしば。僕自身、ヒップホップの前知識はほとんどなく、強いて言えば2PACやクール・ハーク、RUN DMCくらいしか分からない状態で読み始めたのですが、よほど有名な人物やグループでないと、エピソードがすんなり頭に入ってこない印象でした。

説明が丁寧なぶん文章も全体的に長く、「結局、何が言いたいんだっけ?」と迷子になる瞬間も正直ありました。この本の価値をしっかり受け取るには、1周だけでなく2周、3周と繰り返し読む必要があると感じています。

こんな人におすすめ

ある程度ヒップホップの歴史にまつわる著名人や出来事を知っていて、「もっと深掘りして知りたい」と思っている中級者以上の人には、間違いなくハマる一冊です。

初心者の場合は、内容をしっかり理解するために、少なくとも2周は読む覚悟が必要かもしれません。それでも、時間をかけてじっくり向き合えば、初心者でも十分に学びの多い本だと思います。

逆に「ヒップホップの歴史を、ざっくり全体的に知りたいだけ」という人には、あまり向いていません。初心者の中でも「これからヒップホップについてガッツリ勉強していきたい」という気持ちがある人でないと、正直、読破するのはなかなか厳しいというのが僕の率直な印象です。

まとめ:読んで変わった、ヒップホップとの向き合い方

この『ヒップホップ・アメリカ』を読んだおかげで、僕自身のヒップホップ音楽やダンスに対する考え方は大きく変わりました。

一番刺激になったのは、「ヒップホップは、自己をレペゼンするためのツールである」という考え方が、その根っこにあるということ。そのマインドを体現する手段として、グラフィティだったりダンスだったり、さまざまな表現方法に姿を変えながら「レペゼン自分」をしているのだと分かりました(多少シンプルにまとめすぎかもしれませんが)。

そしてもうひとつの気づきが、「型に囚われる必要はない」ということ。「このステップはこう動かなきゃダメ」といったステレオタイプに固執する必要なんてなくて、基礎となるさまざまな技を知った上で、自分なりに噛み砕いてアレンジし、「レペゼン自分」をする。これこそがヒップホップなんだと、いまは思っています。

書籍の中でも触れられていましたが、ヒップホップは時代に合わせて姿を多様に変えながらも、その根底にあるマインドはずっと変わっていません。

これからは、先人たちへのリスペクトを忘れないようにしつつも、何も恐れることなく、自信を持って「これが俺だ」と言えるダンスや表現を、これからも磨いていきたいと思います。

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